「…だから、慣れてないくせに
犯罪なんかしない方がいい。
君が殺人犯になったら、悲しむ人がいるんだから。
……ひとりじゃない。
君にはお母さんがいるし、
必要とされてる人間なんだから。」
そう……彼には、あたしと違って
心配してくれるお母さんがいる。
だから……彼は犯罪を
犯していい人間なんかじゃない。
「……それでも殺るなら、
…お母さんがひとりになってもいいのなら、
勝手に父親を殺せばいい。」
……とは言ったものの、
あたしが言い終える頃には、彼の表情は
少し柔らかくなっているように感じた。
「……そう、だよな。
…俺なにやってんだろうな…。
やっぱ、母さんをひとりには出来ねぇよ…。」
そう言って、彼はため息をついた。
「……けど、あいつを殺したいほど憎んでる
気持ちは……これっぽっちも消えてねぇわ。」
そう言って、彼は悔しそうに
拳を握りしめた。
……それでいいんだよ。
……社長と接触し、死へと追い詰めて
排除するのは……あたしの役目だから。
彼が発した言葉を聞いて、
あたしはそんなことを思っていた。


