「母さんは、病気で入院してんのに
あいつは見舞いにも来ねぇんだぜ?
挙句の果て"治療代払ってやってるんだから
不倫くらいで騒ぐな"だってよ。
もう笑えるだろ?」
そう言って、呆れ果てたように笑う彼。
袖から見えた腕には、痛々しい傷跡がある。
父親と言い争いにでもなったのだろうか…?
「母さんのために、ずっと我慢してたけど…
……もう長くないんだってさ。」
そう言って、彼は悔しそうに
唇を噛み締めた。
「……長くないって……香澄さんが?」
「…あぁ。母さん、心臓に持病があってさ。
医者はいつ死んでもおかしくないって。
でも……今も意識すらねぇーんだもん。
話しかけても、返事しねぇしっ
こんなん、死んでるのと同じじゃねーかっ…。
だったらもう……あいつなんて必要ねぇよ!」


