あたりに騒がしさが出てきたわ。

 ぱたん、本を閉じる。

 読みごたえは…まあまあってところかしら。

「陽が落ちてきたわね」

 教室に鞄を取りに行きましょうか。

 時計に眼をやる。
 4時30分。帰るのにはまだ早いわね。

 それに、廊下が少し騒がしいのは文化祭準備をしているからでしょうね。

 今行ったら、手伝わされるのかしら?
 まさかね。

 ポケットからカッターを取り出す。

「これ、持ち歩くのやめた方がいいかしら」

 隠しやすい形をしている銀色の普通のカッター。
 そっとポケットに戻してから立ち上がった。

「…行きましょうか」

 本を棚に戻して図書館を出た。