窓際に寄りかかり、手にとった本を開く。


「……………………」


風が心地いい。
窓を開けたせいか、桜の花びらが入ってきているのが視界の端に見える。


ーガラガラガラ…


扉が開く音がした。


まさか……ね……


この時間に入ってくるのは同級生だろうし、新入生は入学式の準備に忙しいはずだ



そのまま本に目を落としていると、コツ、コツと足音がこちらに近づいてくるのが分かった。



「あれ、先約?」


私は本を見つめたまま、耳を疑った。


『おっ!?先約!?』


まるで、あの日に戻ったような……デシャブ?
この図書室にいるのは私だけで、つまり、私に話しかけてるわけで………



頭の中が混乱してきた。
本を見てるのに、内容は全く頭に入ってこない。
目の前にいる人に全神経が向いている。



「君もサボり?」

『君もサボり?』


確信した。
今、ここにいる人は……


私が会いたくて会いたくて仕方ない人。
ずっと探していたし、ずっと待っていた人。


「あたし?あたしは……人を待ってるのよ」


顔を上げて、目の前の人を見る。
可愛らしく、どこか幼い顔立ちのとても整った顔をした男子だった。
そのくせ、身長はかなり高い。


「そっか。俺は、人を探してるんだけど、知らない?」


明らかに同級生には見ない顔だ。
だとしたら新入生……


「さぁ、どんな人なの?私、あなたよりたぶん上の学年だから、私が知ってる人ならいいんだけど」


「笑うと可愛いくて、美人で、ちょっと、ツンデレ?」


照れながら答える彼に私はため息をつく。


「それ、言ってて恥ずかしくない?」


というか、私が恥ずかしい!


「俺、前世で愛してた人を探してるんだ」


やっぱり………この人だ。


お互いに確信していながら、確信をつかずにふざける。


「奇遇ね、あたしも前世で愛していた人を探してるの」


もちろん、今も愛している人………