後方、100メートル。

八峠さんの言葉を聞いた時、ゾワッ……と、全身の毛が逆立つ感覚に襲われた。


八峠さんは、後方100と言った。 でも今はもう、多分私の視える範囲にまで近づいている……。




「入れっ!!」

「……っ……」




八峠さんが、私が先になるようにとグイッと手を引っ張る。

そのまま手が離れ……私は敷地内へとギリギリ入ることが出来た。




「八峠さんっ」




──結界の中に入った直後に足を止めて振り返った私が見たのは、敷地内に入ってすぐバランスを崩した八峠さんと、その後ろに居る黒い大きな塊だった。




「避けろ、馬鹿っ」

「うわぁっ!?」




……八峠さんは私の真後ろに近い位置を走ってきていた。

そして、敷地内に入った途端にバランスを崩したので……当然のように私にぶつかって、私もろとも その場に倒れ込んでしまった。