「アレは恐らくカゲロウが送り込んできた奴だ」
「……っ……」
「向こうもコッチに気付いているから、すぐに近くまで来ると思う」
カゲロウ……この前のアレのあと、私は凶悪な霊は視ていない。
まぁ、毎日八峠さんが霊を飛ばしてきてたけど……。
でも今は、八峠さんが飛ばしてきた霊じゃないモノが私たちのそばに……。
「とりあえず、人の居ないところに移動するか」
「あ、はいっ……」
八峠さんに促されるまま、川沿いの道から住宅街へと続く道へと進路を変える。
川沿いの道は散歩をする人や下校途中の学生などが居るから、そこで幽霊と接触するのは確かにマズい。
他の人には幽霊が視えていないけれど、幽霊に影響されてしまう人っていうのは居るから、危険が増える。
危険を増やさないためには、私たちが人の居ない場所へと移動して そこで迎え撃つのが1番なんだ。
「距離が1キロに縮まった。 少し走るぞ」
「え、ちょっ……」
「いいから来いって。 チンタラしてたら真後ろにつかれるだろうがっ」
「……っ……」
八峠さんに手を掴まれ、彼に引かれるがまま走り出す。
私にはまだ幽霊の姿が視えないけれど、険しい表情の八峠さんを見る限り、かなり危険な状態らしい。
これからどうするんだろう。
どこか空き地があればいいんだけど、全然見当たらないっ……。
「八峠さんっ、どこに向かうんですかっ……」
「この先に俺の家がある。 そこに着けば大丈夫だ」
「そこまでの距離はっ……!?」
「約300。 ギリギリだな」
八峠さんの家……そこにたどり着けば、なんとかなるっ……。



