「……私、全然視えてないですね……」

「あぁ、せめて200メートルは欲しいところだが……多分これが限度だな」

「すみません……」


「せめて感じ取れるようにはなれよ。 目で視るなんて素人がやることだ」




……私、メチャクチャ素人ですけどね。

と言いたくなったけど、隣を歩く八峠さんが真剣な目をしていたから言うのをやめる。

見れば、女性の幽霊との距離が あと30メートルほどとなっていた。




「……」




お札を持っている私の姿には気付いていないらしく、女性は八峠さんのことをジーッと見ている。

その視線を受けながら足を止めた八峠さんは、女性をジーッと見つめ返した。




「コイツはなんで死んだと思う?」

「え? あ、えっと……」

「目じゃなくて心で感じ取れよ」


「……」

「なんで、死んだと思う?」




視線がぶつかったままの二人を横から見つめ、ゆっくりと、女性だけへと視線を移す。

目で視えるモノではなく、心で感じ取る……。


どうやってそれを感じ取るのかは全くわからないけれど、それでも私は、その女性を静かに静かに見つめ続けた。


そして……──、




「あ……」







──……頭の中に、視えた。