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その後、秋さんは私が連れてきてしまった幽霊を飛ばすために外へと出た。

『飛ばす』というのは そのままの意味で、幽霊を遠くへと飛ばすのだ。


除霊とは違い、危険がない域まで飛ばすこと。

散らす。と言う人も居るけれど、私と秋さんの間では『飛ばす』と呼んでいた。


秋さんは私よりも強い力の持ち主で、だからこそ幽霊を遠くへ飛ばすことが出来る。

八峠さんは その秋さんよりも更に強い力の持ち主……のはずだ。




「……よし、連絡してみよう」




突然の電話だから『誰だお前』って言われてしまうかもしれないけど、双葉と名乗ればきっとわかってくれるよね。

私は会話したことがないけれど、お父さんとお母さんは時々電話で話してるみたいだし。




「……でも、緊張する……」




私は八峠さんの名前しか知らなくて、彼がどんな容姿でどんな性格なのかはまったくわからない。


話しやすい人? それとも怖そうな人?

ていうか何歳? 私や秋さんよりは当然年上だよね?


今どこに居るんだろう? 自称・霊能力者って、どういうことをしてる人なんだろう?


そんな色々な疑問が浮かんでは消えていき、不安ばかりがあとに残る。

……だけど、悩んでたって仕方ない。


何かあった時は八峠さんに頼る。 それが私たち一族の決まりのようなものだった。




「……大丈夫」




携帯の画面に表示されている八峠さんの番号を見つめ、息を深く吐き出したあとにボタンを押した。