二人とも、『カゲロウの血』……。

つまり、親戚同士での結婚だった、ということだ。




「親戚だってことを知らずに大学で出会って、普通に恋に落ちて、普通に付き合って、結婚を考え始めた時に『カゲロウの血』の話をしたらしい。
遠い遠い親戚だから結婚には問題無かったけど、やっぱり色々悩んだっぽい。
何歳まで生きられるかわかんねーし、子供が生まれた場合、その子供も『カゲロウの血』になるかもしれない。
遺伝とかそういうのは関係ないのかもしれないけど、凄く凄く悩んで、悩んだ末に結婚したんだとさ」

「そうだったんですか……そして、八峠さんが生まれた……」

「おう、『カゲロウの血』を持ってな」




フゥー……と静かにタバコの煙を吐き出し、八峠さんは空を見る。

亡くなったお父さんとお母さんのことを想っているのか、その瞳はどこか寂しそう。




「俺がカゲロウを追うのはさ、つまりは敵討ちなんだよ」

「……」

「ハクにカゲロウのことを聞いていなかったら、『カゲロウの血だから仕方ない』で終わっていたかもしれない。
『いつかは俺もそうなるんだ』って思いながら残りの人生を生きていたかもしれない。
……だけど俺は、ハクのこともカゲロウのことも全部知っていた。 知っていたのに何もしてこなかったんだ」