……やっぱりカゲロウは、初めから秋さんを狙っていたんだ……。




「……どうして秋さんなんですか? 私や双子の方が、力は弱いのに……」

「だからこそだと思います。 僕らは杏さんや双子のことは常に考えていますが、秋さんのことは『彼なら大丈夫だろう』という認識でした。
そこがカゲロウの狙い目だったんです。 残念ながら、彼の計画は失敗に終わりましたけどね」




……そう、カゲロウの計画は失敗に終わった。

だって八峠さんは秋さんを守り、双子もまた、無事だったんだから。




「あの……八峠さんは、カゲロウの考えがわかっていたんですか?」

「まぁ、想定の範囲内だ」




……凄いな。

この人は何も考えていないようで、ちゃんと色々と考えているんだ。


彼が居てくれたからこそ秋さんは生きている。

まぁ、八峠さんに殴られて怪我はしちゃったけど……でも、秋さんは生きているんだ。




「……八峠さん、ありがとうございます」

「あ?」

「秋さんのこと、守ってくれたから……だから私、凄く嬉しいです」


「おう」




私の言葉に八峠さんは短く返事をしただけだったけれど、それでも彼は、私を見て笑ってくれた。


普段は妙に偉そうでムカつくこともあるけれど、今の彼の笑顔は、心があったかくなるような優しいもので。

そんな顔を私に見せてくれている。 それが、ただただ嬉しかった。