「……秋さん。 この人の話、胡散臭いとは思わないんですか?」




思わずそう聞いてしまった私に、秋さんは苦笑した。




「そりゃあ胡散臭いとは思うけど、俺を助けてくれたのは事実でしょ?
八峠さんは凄く強い人で、薄暮さんも強い。 その人たちが言うんだったら、俺も信じるしかないよ」

「……そういうもの?」

「うん、そういうもの」




絆創膏を貼り終えた顔でニコッと笑い、秋さんはコーヒーを飲む。

そのそばでは八峠さんが『胡散臭くて悪かったな』とどこか不機嫌そうに言うけれど、秋さんの笑顔につられるようにしながら、彼もまた笑みを見せた。




「オサキ。キミは話せるの?」

『あぁ、話せるとも。 秋さん、これでも僕は男だから『その子』とか『キミ』と言う呼び方はやめてくれるかい?
そういう呼び方をされると、なんだか体の奥がむず痒くなってしまう』

「あぁゴメン、気を付ける。 オサキはしばらくここに居るの?」


『あぁ、ここで杏チャンの“ぼでぃーがーど”をしていれば、一縷さんの役に立てるからね』

「そっか」




ふわふわの尻尾をゆっくりと揺らすオサキを柔らかな笑顔で見る秋さん。

そのそばでは、何故か八峠さんが神妙な面持ちをしていた。