「……」
コールが、2回、3回、4回と続いていく。
初めて電話した時は2回目に入ろうとした時にすぐに繋がったけど、今は全然繋がらない。
……あの時は薄暮さんが電話に出たから早かったけれど、八峠さん自身が電話に出る時は、結構遅いのかな?
それとも、何かあった……?
……考えてみれば八峠さんも『カゲロウの血』だ。
まさかカゲロウが狙ったのは、双子じゃなくて八峠さん?
八峠さんが電話に出ないのは、カゲロウにやられてしまったから……?
「八峠さん……どうして出ないの……」
不安ばかりが募っていく。
その中で、ふと……本当に微かな音だけど、どこからか着信音が聞こえてきた。
下……?
ううん、外……?
ドン、ドン、ドンッ
「……っ……」
窓を叩く音が室内に響く。
ここは2階の部屋なのに、それでも『彼』は窓の外に居た。
「八峠さんっ!!」
耳にあてた携帯を慌てて切ると、彼の方から聞こえていた着信音もピタリと止まる。
私を見た彼はどこか疲れたような顔をしながら、僅かに視線を自分の横へと動かした。
「えっ……!?」
──その方向から現れたのは、口元に血を滲ませながら笑う秋さんだった。



