……時間にすれば、僅か10秒……ううん、5秒ほどだったかもしれない。
その間に彼は幾度となく塊を斬り、床にボトボトと落ちた塊は、落ちたモノから消えていった。
……相手が人ならば、薄暮さんはきっと相手の血で真っ赤になっていただろう。
猟奇的な殺人。 そんな風に言われるような殺し方だった。
「……すみません、あとで室内を清めておきます」
私に背を向けた薄暮さんは、天井を見ながら大きく息を吐き出した。
気持ちを落ち着かせ、『いつもの自分』を私に見せる。 彼が天井を見つめたのは そのための準備のように見えた。
「……薄暮さん……」
「僕は双子のところに行ってみます。 杏さんは、八峠さんに連絡をしてください」
……振り返った彼は、いつもと同じように優しく笑っていた。
ううん、いつもよりも、どこか寂しそう……。
「オサキは杏さんのそばに居て。 しばらくは安全だと思うけど、警戒はしておいて」
『えぇ、わかりました』
「杏さん、またあとで来ますね」
ニコッと笑った彼は、そのまますぐに姿を消した。



