「……ついつい、足を止めてしまったんです。 『何年もここに居るなんて可哀想だなぁ』って、思っちゃったんです」

「でもそれは男の子なんかじゃなくて、杏ちゃんを狙う凶悪な幽霊だったってわけか」

「そうなんです。 だけど……本当に男の子は居たと思います。 多分、他の霊に取り込まれてしまって……自分の意思では何も出来なくて、利用されてたんだと思います」




社務所の奥で話をする私と秋さん。


──ここは秋さんのお父さんが宮司を務めている神社で、秋さんは神職の勉強のため ここで働いている。

私の家と学校の間くらいのところにあり、時間がある時はいつも遊びに来ていた。


……まぁ、今日みたいに危ない時もお世話になってるんだけどね。

神社は言葉の通り『神の社』で、鳥居の内側は光に守られている。

だからさっきみたいな憎悪の塊は絶対に入ってこられないし、無理に入ろうとすると塊は一瞬で消滅する。

幽霊たちはそれが“わかっている”から、鳥居の外を飛び回るだけなのだ。




「幽霊も弱肉強食、か」

「……それに、自分たちで考えて行動しています」

「うん」




……幽霊は人間と同じように、自分たちの考えを持って生きている。

幽霊に『生きている』なんて言葉は変だけど、でも、実際にそうなのだ。


だからこそ私は幽霊たちに狙われ、何度も死にかけているのだから。