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……




その後、私たちはそれぞれ適当な場所に座って話をしていた。

……ううん、話をしていたのは薄暮さんとオサキで、私と八峠さんは聞く側だ。




『──ということで、僕は一縷さんに命を救われたんです』

「……つまり、『お前のせい』でハクはカゲロウにトドメを刺せなかったわけか」

『えぇ、その通りっ』


「自信満々に言うなよボケ」




ハァ……と、深く深く息を吐き出す八峠さん。

彼がため息をつきたくなるのはよくわかる。 だって私も、八峠さんと同じ気持ちだったから。




……薄暮さんとオサキの話を要約すると、まさに『お前のせい』ということになる。


300年ほど前……薄暮さんとカゲロウは互いの力をぶつけ合い、深い山奥で戦っていた。

形勢は、薄暮さんが有利。

あと一歩。 もう一歩。 というところまでカゲロウを追いつめていたらしい。


そこに居たのが、彼──オサキだ。


オサキは二人の戦いを遠くから観戦していたらしい。

逃げることはせず、『面白そうだから』と見ていた。 『二人とは距離があるから大丈夫』と思っていた。

……でも、大丈夫じゃなかったんだ。





『いやぁ、今 思い出してもあの戦いは凄かったですねぇ。 なにせ、山を噴火させてしまうほどの力ですから』

「さっさと逃げてりゃよかっただろーが、この馬鹿っ」

『いやはや、申し訳ない』


「全然申し訳なさそうな顔じゃねぇけどな」




……すっかり仲良しになった八峠さんとオサキ。

そんな二人を見つめた薄暮さんは、微笑みながら静かに言った。




「元々あの山は噴火が近かったんです。 数日前から予兆がありましたから、遅かれ早かれ噴火はしていた。
……まぁ、僕らの力がマグマを呼び寄せてしまったのは事実ですけどね」