……薄暮 一縷という名前は、偽名なのかな。

だって『薄暮』も『一縷』も珍しい名前だから、一度聞いたら絶対に忘れない。

そんな珍しい名前で活動していたら目立って目立って仕方ないと思う。



だから……私や秋さんの前では『薄暮』と名乗ったけれど、他の人の前では違う名前を言っているのかもしれない。

すべて『薄暮』で通しているとしても、数年前は違う名前だったかもしれないし、数年後にはまた違う名前になってるかもしれない。



……彼は不老不死。

私は彼の一部分……の一部分の、更に一部分しか知らない。ということになる。


もっと色々なことが知りたい。 色々な話を聞きたい。

そう思っていても、時間が足らないのは明白だった。


彼も私も殺されれば死ぬ。

けれども彼は自然に死ぬことはなく、私はやがて死ぬ。


一緒に居る時間をどれだけ作ったとしても、私は絶対に、彼に追いつくことは出来ないのだ。