『どんな感じの人だった? やっぱり面倒臭そうな顔してた?』

「……やっぱり、ってことは、秋さんの電話に出た八峠さんって、かなり面倒臭がってました?」

『うん、相当ね。 でもいい人だなぁって思ったよ。 困ってた俺のところに薄暮さんって人を寄越してくれて、そのおかげで俺は生き延びることが出来たから』




……そうだったんだ。

そんなことがあったなんて全然知らなかった。


あ……もしかして、お札の効力が切れて怖い目に遭ったって言ってたその時に、秋さんは薄暮さんと会ったのかな?

あまり話したがらないから聞いていなかったけれど、秋さんはその時に薄暮さんと会っていたのかもしれない。




『薄暮さんは、まだ八峠さんと働いてるんだよね?』

「あ……はい。 八峠さんと一緒に来てました」

『そっか。 久しぶりに会いたいけど、あの人も忙しいもんなぁ……』


「……ですね。 今日も忙しいみたいで、すぐに帰ってしまいました」




本当は私のそばで幽霊の対応にあたっているけれど、秋さんにはそのことを黙っていることにした。

家の結界が無くなっていると知ったら心配するだろうし、薄暮さんの正体もバレてしまうかもしれない。


秋さんに隠し事をしてしまうことになるけれど、うっかりと余計なことを言ってしまわないためには、これが一番いい方法だと思った。




(……本当のことを言えなくてごめんなさい)




心の中で強く念じながら、私は秋さんとの会話を続けていった。