【始まり】




──それは、ほんの些細な出来事から始まった。




(もうっ……私の馬鹿っ……!!)




石段を駆け上がりながら、私は泣きそうになっていた。




(子供でも幽霊は幽霊なのに……!! ちゃんとわかってたはずなのにっ!!)




背後に迫り来る黒い影。

それは、元々は人の形をした小さな子供の幽霊だった。

だけど今は大きな黒い塊となり、憎悪と殺意に満ちている。




……私は小さい頃から幽霊が視えていて、幽霊と話すことも出来る。

というか、一方的に喋りかけられてくるのがほとんどだ。


小さい頃は幽霊の声に導かれるまま川へ入って溺れそうになったし、その数ヶ月後にはおばあちゃんの家の裏にある山で遭難して死にかけた。

信号待ちをしてた時に背中を押され、車に接触したこともある。

大事には至らなかったけれど、たくさんの人に迷惑をかけたし、心配をかけてしまった。


他人からすれば『子供のしそうなこと』とか『不幸な事故』とか、そういう風に見えるかもしれない。

だけど親類はみんな『カゲロウの血のせいだ』と わかっていた。



『カゲロウの血』……それを持って生まれてきた子供は、必ず幽霊に狙われる。

そのため、親類の中で『不慮の事故』として亡くなる子供は異常に多かった。