『まぁ小刀を届けたのは僕だから、全部ひっくるめると僕のおかげということに なるんだけどね』
「あーもう、それ耳にタコが出来るくらい聞いてるし。 学校に着いたんだから黙っとけっ」
『そういう氷雨っちも、いい加減に黙らないと独り言を言っている変な人に思われるんじゃないかい?』
「クソギツネめっ」
氷雨くんは蹴りを入れるように足を動かしたけれど、オサキはそれを軽くかわしたあと、氷雨くんの頭の上にぴょんと飛び乗った。
「降りろよ、コラ」
『イヤだよ。 だってここが好きなんだもん』
「お前はガキかっ」
なんて言いながらも、氷雨くんはオサキを避けることなく受け入れている。
ほんと、なんだかんだで いい仲だ。
「……あれから1ヶ月、か……」
空を見つめながら、ぽつりと呟く。
私と氷雨くんはいつもと同じように学校へ行き、雨音さんも前と同じように仕事をしている。
オサキは氷雨くんのよき友で、イツキさんは雨音さんのよき彼氏。
祥太郎さんは入院していたけれど、それも今日で終わり。
明日になれば、彼は彼の生活を開始する。
カゲロウを倒してから1ヶ月。
そして、薄暮さんが居なくなってから1ヶ月だ。



