「なんかさ、私たちって家族みたいだよね」

「えー? なんだよ急にー。 それって『私の家族になってー』っていうプロポーズ?」

「あはは、違うよ。 氷雨くんは私の弟みたいだなーって思ったのっ」


「マジか。 つーか俺は双葉ちゃんのこと妹みたいに思ってるよ?」

「え、絶対私がお姉ちゃんだしっ」

「いやいや俺がお姉ちゃんっ!! じゃなくて俺が兄貴っ!! くっそ素で言い間違えたっ。 俺はオネエかよっ」




なんていう馬鹿な話をしながら、私たちは大笑い。

なんでもない日常が、ただただ楽しくて仕方がなかった。




『お二人さん、急がないと遅刻するんじゃないかい?』

「うっわヤバい!! 走ろう双葉ちゃんっ!!」




さっと手を握られ、まるで彼氏が彼女の手を引いて走っているかのような光景になるけれど。

それでもやっぱり私たちは そういう関係ではなくて、親友なんだ。と思いながら走り続ける。






「ね、氷雨くんっ。 私さ、氷雨くんやみんなと一緒の時間、本当に大好きだよっ」

「道ばたで『大好き』とか恥ずかしいじゃないですかー。 俺も双葉ちゃんのこと大好きだぜー」

「いやいやっ、私はみんなと一緒の時間が大好きって言ったのっ」


「あははっ、わかってるわかってる。 俺もさぁ、みんなと一緒の時間がマジで楽しいよっ」




予鈴が鳴る中で、なんとか校門の内側へと滑り込む。

肩で息をしながら私を見た氷雨くんは、満面の笑みを浮かべていた。




「双葉ちゃんと出会えてよかった、ってマジで思ってるよ。 『呪われた家』のこと、助けてくれてありがとね」

「そんなっ。助けたのは私じゃなくて薄暮さんだよっ」

「でもさ、双葉ちゃんが居なかったら薄暮さんは負けてたっしょ? だから双葉ちゃんのおかげだよ。 あとついでに八峠さんにも感謝なっ」




ゆっくりと歩き出した氷雨くんは、もう一度『ありがとね』と言ったあと、ひらひらと後ろ手に手を振った。