「明日退院だよ。 と言っても、通院はまだまだ続くみたいだけどね」

「さすがの八峠さんでも、あんだけ怪我してりゃ仕方ないもんなぁ。 で、八峠さんは双葉ちゃんのとこで暮らすの?」

「んー、どうだろう。 その方がいいんじゃないかって私も私の家族も言ってるけど、多分自分の家に戻るんじゃないかな。
あの人、『これ以上 迷惑かけられないよ』って言ってたから」




私もお父さんもお母さんも、迷惑だなんて思ってないんだけどね。

でも祥太郎さんは色々と気を遣ってしまうみたい。




「今日ね、祥太郎さんの家を掃除しに行こうと思ってるの。 それから、一人でも暮らしていけるように食材とかも買っておこうと思って」

「そっか、じゃあ俺も手伝うよ。 重い物はどんどん任せなー?」

「ふふっ、ありがとっ!!」




氷雨くんが転校してきてすぐは こんな風に笑って話せるなんて思ってもいなかった。

けれど私と氷雨くんは、今は1番の仲良しだ。

友達には『付き合ってるのー?』なんて茶化されるけれど、私たちの関係はそういうのじゃなくて、なんだろう……氷雨くんと過ごす時間が、ただただ心地良いのかもしれない。


氷雨くんは幽霊のことを話せる唯一の友達だから、なんでも話せることが出来て凄く嬉しいんだ。

もちろん幽霊以外のことも話すし、氷雨くんからも色々なことを話される。

何か楽しいことがあれば一緒に笑って、イヤなことがあったら一緒にヘコんで、ツラいことがあったら一緒に甘い物を食べて慰め合ったりもする。


そこにはいつもオサキが居て、オサキから話を聞きつけた雨音さんがやってきて、雨音さんの隣には前よりも表情の和らいだイツキさんが居る。

みんなでお茶を飲んで、お菓子を食べて、暇つぶしに入院してる祥太郎さんにメールを送ってみたら、『ズルい俺も混ぜろ』という苦情の電話が来て、みんなで大笑い。


私は、そういう風にみんなで過ごす空間が好きなんだと思う。