答えは知りたくない。 でも聞かなくちゃいけない。

何も知らずにココから離れるなんて、そんなことはしたくなかった。






「俺と話した時は前者だ。 だが今は後者かもしれない」




……短くても確かな言葉に、胸の奥が締め付けられる。

やっぱりあの人は死ぬつもりだったのか……。


そして、もしかしたら今はもう……。




「……八峠さんと双葉ちゃんに、なんて言えばいいんだよ……」




……薄暮さんのことを、どう伝えればいいんだ。







「ありのまま言ったらいいんじゃないかな?」




イツキさんの手をそっと握った雨音さんが、俺を見て微笑んだ。




「私たちの知ってることは全部話してさ、みんなで泣こ。 そして笑お」

「……」

「よし。 じゃあ、戻ろうっ。 八峠くんと双葉ちゃんのことを回収して、家に帰ってふかふかのベッドで眠ろっ」



雨音さんの声は いつもみたいに能天気なものだったけれど、その瞳はどこか悲しげだった。

それでも笑っていられる雨音さんは、本当に強い人だと思う。




「……俺は多分、泣くばっかりだよ」




薄暮さんと一緒に過ごした時間はとても短いものだったけれど、それでもあの人は俺の師匠で、俺が誰よりも尊敬してる人だった。




「……さよなら、薄暮さん」




本当は『さよなら』なんて言いたくはないけれど、そう言わなくちゃいけないんだと思う。

不老不死である彼が死を選んだんだ、それを否定なんてしちゃいけない。




(……幽霊でもいいからさ、たまには会いに来てよ、薄暮さん)




胸の苦しみは強くなる一方だし、目からは涙が溢れ出す。

それでも精一杯に笑顔を見せ、イツキさんと雨音さんの手を握り締めた。