……カゲロウは、ずっと悩んでいたのだろうか?

僕の知らない場所で、たった一人で……。




「……陰と陽、光と陰、表と裏……それは決して交わることはない。
だから俺は光を消そうと思ったんだ。 あんたを殺したかったんだ」

「……」

「俺はあんたが邪魔なんだよ。 あんたが居なきゃ、俺はもっと自由に飛ぶことが出来たんだ」




……そうか。

カゲロウは、世界征服なんて考えていなかったんだ。


僕を殺せればそれでいい。

きっとそうなんだ。


僕を殺すために動いてきて、『世界を壊す』というのはその過程で出来たモノだったんだ。


そうか。

僕が居なければ、か……。





「……300年前、俺はあんたに殺されかけた。 それは俺の心に隙があったからだ。
コイツに負けるはずがない。 勝つのは俺だ。と わかっていたから、気が抜けていたんだ」

「……」

「でも今はもう負けないよ。 隙を作ったりもしない。
だって今の俺には、守るべき人が居るからね」




……ユキさんを守るために、僕を殺すのか。

そうだよな……守るってことは、そういうことだもんな……。


でも……。




「……僕にも、守りたいものはあるよ」




……本気で戦って負けたとしても、それでも、守りたいものがある。




「僕は、八峠さんや杏さんの未来を守っていきたいんだ」