地震のような今の揺れはカゲロウの仕業らしい。

カゲロウは微笑んでいたけれど、その目は笑ってはいなかった。




「どういうことだい、斎」

「……」

「何故 結界を? 何故ここに彼らが居る?」




……そんな風に聞きながらも、カゲロウは全部わかっているだろう。

イツキさんがこちら側であること、そしてユキさんを渡さないようにと結界を張っていること、すべてを知りながらも、カゲロウは訊ねてきたんだ。




「斎」

「……俺はこの先、人間と共に生きようと思う。 だから契約の解除を願いたい」

「そうか。 だが、俺との契約を解除すればお前は消えてなくなるぞ?
元々この世界のモノじゃないんだ、人間と共に生きるなどという夢は到底叶わないよ」




……使い魔は、主と契約してるからこそ この世に身を置くことが出来ている。

その契約が解除されれば、使い魔は消えてなくなる……。


カゲロウのその言葉が正しいのかどうかわからないけれど、言葉を出せずに固まってしまったイツキさんを見る限り、本当なんだと思う。

カゲロウと契約してるからこそ、イツキさんはココに居ることが出来ている……。






「……解除すればいいよ。 解除してあげて」




誰もが言葉を出せずに居たその時、イツキさんの手を握り締める雨音さんがそう言った。