「お前は俺を殺すことだけを考えて生きてきたのだから、当然後者だろう?」

「……てめぇは多くの人間を殺してきた最低最悪な奴だ。 理由がなんであろうと、人が人の命を奪うなんて あっちゃダメなんだっ」

「では、お前には俺を殺すことは出来ないな。 俺は人間だ。 だからお前に俺は殺せない」




ユキの体をそっと床に寝かせたカゲロウは、長い髪を緩く結んだあとに微笑んだ。




「俺はお前を殺すよ。 俺たちのために死んでくれよ、八峠」

「……っ……」




まばたきをする その一瞬で、カゲロウが間合いを詰める。


奴は素手だ。

……だが、気を込めれば骨を砕くなんて余裕で出来る。


防御? いや、回避だ。

奴の拳を正面から受けてはいけない。 コレを受けたら俺は死ぬ。

一瞬であの世行きだ。




「……く…そがっ……!!」




ダメだ。避けきれないッ……──!!








「さよなら、八峠 祥太郎」







──……カゲロウの拳は、腹部を直撃だ。

体は為すすべもなく吹っ飛び、小屋の壁を突き抜けたのち数本の木々を倒したところで ようやく停止した。


そして俺の意識は、そのまま静かに遠退いていった。