「ハクの到着を待つべきか、中へ突入するべきか」




そう言いながらも、俺の足は小屋へと向かって歩き出していた。

誰かに操られているわけではなく、自分の意思で小屋に向かっているのだ。




「……奴が暴走する前に、中に入っとかねぇとな」




イツキは言った。 『雪はまだ生きている』と。

だが、いつ死ぬかはわからない状態だ。


彼女が死んだあと、カゲロウはどこか遠くへ飛んで世界を壊しにかかるだろう。

そうなってしまったら、俺がここに居ること自体 無駄で無意味なものとなる。

俺は瞬間移動なんて出来ないから、山奥で世界が消えるのを見るしかない。


そうなってしまう前に、ケリをつけなければ。






「急げよイツキ。 ……ハク、早く来い」




俺の力は、まだ完全ではない。

……6に近い7。 戦闘が始まれば、それは一気に減っていく。




「……」




扉に手をかけ、ゆっくりと開く。





──そこに居たのは、血まみれの女性を抱き抱える長い黒髪の男。

……カゲロウは、薄い笑みを浮かべながら俺を見た。




「彼女を救いに来たのか? それとも、俺を殺しに来たか?」




──その言葉の直後、部屋の空気が 殺気に満ちた重苦しいものへと変化した。








(……やっべ、俺死ぬんじゃね?)




カゲロウを殺しに来たはずなのに、奴に勝てる気がしない。