八峠さんが電話を切ったあと、氷雨くんからの連絡は無い。

私たちが無事に家に辿り着いたこと、そして薄暮さんの無事を知らせようと携帯を開く。


履歴から氷雨くんの番号を引っ張り出してボタンを押した。

そして、1回目のコール音が鳴った直後──。




『もしもし双葉ちゃん!? 生きてるッ!?』




──……相当 心配していたらしい氷雨くんが、電話の向こう側で叫ぶのが聞こえた。




「もしもし、こっちは大丈夫。 今ね、八峠さんの家に居るの」

「よっしゃ生きてるっ!! マジでよかった。 カゲロウに殺られたのかと思って心配してたんだよっ」

「心配かけてごめん。 薄暮さんも今は こっちに居るから安心して?」


『そっか、よかった。 俺とお袋も大丈夫だよ。 ていうか、こっちにゃ全然なんも来てないんだ。
お袋はいまだに殺気感じまくりらしいけど、多分こっちには来ないんじゃないかって言ってるよ』

「あ、でも警戒は続けてね? 不意打ちで殺られた。なんて、そんなの本当にイヤだから」




もう誰も失いたくない。 誰の命も奪われたくない。 それが私の想いだった。




『オッケーオッケー、俺に任せとけっ!! じゃあまた何かあったら連絡して? 俺もなんかあったらすぐ連絡するからっ』

「うん、気をつけて」

『双葉ちゃんもねっ』




その言葉のあと、電話が切れる。

氷雨くんと雨音さんは無事。 双子も無事、私たちも無事。

……私たちの知らないところで誰かは狙われているのかもしれないけれど、私には それを知るすべは無かった。