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それから2週間が経った。



あの日から、八峠さんは私の家で生活をするようになった。

と言っても、私たち家族と顔を合わせることはほとんど無い。

朝は誰よりも早く起きて、みんながまだ寝ているうちに家を出ているらしく、夜は夜で みんなが寝たあとに戻ってくるみたい。


休日は家に居るけれど、両親は仕事で空けていることが多いから会話は少ない。

でも、仲が悪いというわけではなく、お父さんと八峠さんは時々一緒にお酒を飲んでいるし、お母さんはお母さんで、八峠さんとはメル友らしい。

私は用事のある時 以外は八峠さんに連絡してないのに、お母さんは結構色々と話しているとか……。



そんなこんなで、八峠さんの居る生活にもだいぶ慣れてきた。

その間、カゲロウからの襲撃は一度も無い。




「……カゲロウは、なんで襲ってこないんでしょうね……」

「こんなに長いこと襲われないのは初めてだから、不気味だよな」

「……はい」




珍しく帰宅の早かった八峠さんは、お風呂上がりに私の部屋にやって来た。

まぁ正確には、お風呂上がりにお父さんとお酒を飲み、軽く酔った状態で私の部屋に来た、だ。


八峠さんは私のベッドにゴロンと横になり、静かに天井を見つめている。

私はその近くに座って、八峠さんの顔を見ていた。




「なんらかの理由でカゲロウが死んだ。っつーのだったらいいんだけどな」

「……ですね。 カゲロウが居なくなれば、もう幽霊に狙われることは無いですから」

「ま、死んだかどうかは俺たちにはわかんねーから、しばらくはこのまま様子見だ」





……そう。 結局は様子を見るしかない。

私たちはカゲロウがどこに居るかがわからないから、カゲロウからの攻撃があって初めて『生きている』とわかる。

カゲロウが死んでいる場合、もう呪いの身代わりになることはないけれど……でも、死んだと見せかけた『罠』かもしれない。


気を緩めた瞬間を待っているのかもしれない。と考えると、やっぱり警戒を続けていく他無かった。