「幽霊なんて怖くないッ!!」



「ヤバい、薄暮さんに誉められたっ!!」




……目をキラキラと輝かせる氷雨くんは、薄暮さんが『氷雨くんは強い』と言ったことが相当嬉しかったらしい。




「不老不死の薄暮さんに誉められたっ!! ヤバい、俺は不老不死 以上の存在っ!?」




……というより、結局 面倒臭い人だ。

薄暮さんがどうとかじゃなくて、自分が一番って感じ。

しかも結構ぶっ飛んだ発言……。




「氷雨くん、僕の存在は他言無用でお願いします」

「えぇ、もちろんですっ!! まぁでも、こんなマンガみたいな話、普通は誰も信じないと思いますけどね」

「だけど、内緒にね?」


「はいっ!!」




薄暮さんの微笑みを受け、氷雨くんはニカッと笑ってVサイン。

……大丈夫だろうか?

この人、ポロッと色々言っちゃいそうな感じだけど……。




「氷雨くん。 ほんとに、言っちゃダメだからね?」

「わかってるわかってる、俺は口が堅いからモウマンタイ!! あぁそうだ、八峠さんっ」




ニッと笑った氷雨くんが、八峠さんのことを見た。




「学校に居る間は俺が双葉ちゃんを守るんで、八峠さんは昼寝してて大丈夫っすよ?」

「……お前が杏を、ねぇ」

「心配ないですって。 俺は遠くまで視えないけど、双葉ちゃんは視えるんでしょ?
俺たちが一緒に居れば、それはもう最強っしょ!!」


「……へぇ。 ま、やってみれば?」

「よっしゃ!! じゃあ双葉ちゃん、明日から俺が守るんでよろしくー!!
あ、薄暮さんっ!! また俺を連れて瞬間移動してくれません? 俺んち西区なんで、ここからだと結構遠いんですよー。 お願いしますっ!!」




……次から次へと言葉が出る氷雨くん。

どこが『口が堅い』んだろうか……。 なんて思いながら苦笑いを浮かべる。


そんな私と同じように苦笑いを浮かべる薄暮さんは、『じゃあ家まで送りますね』と言って氷雨くんへと手を差し出した。




「八峠さん、僕は彼を送ったあと そのまま双子のところへ行きますね」

「あぁ、わかった」

「何かあったら連絡します」




そう言ったあと、薄暮さんは『またね』と私に微笑んだ。



──薄暮さんの手に、氷雨くんの手が重なる。

氷雨くんが『じゃあ また』と言った直後、二人は まばたき の間に姿を消した。