………
……
…
その後、氷雨くんの一族を調べて戻ってきた薄暮さんは、『繋がりは何もありませんでした』と小さく言った。
色々な資料を読み、あちこち飛び回ったらしいけれど、カゲロウとの繋がりは何一つ出てこない。
そして、呪いを行っている人物についても何もわからないままだった。
それでも薄暮さんは、『多分カゲロウです』と私たちに言う。
その理由は、幽霊のやり口が似ているから。だ。
「杏さんを襲う時よりは多少強引でしたが、でもそれは氷雨くんが強い力の持ち主だからだと思います」
「だな。 強い奴には強いのを当てる。 弱い奴にゃ普通ので十分だ」
「はい」
「……で、これからどうする? 氷雨と氷雨の母親も、守る対象か?」
八峠さんは、氷雨くんを指差しながら薄暮さんを見る。
そんな彼の言葉に、薄暮さんは少し迷ったあとに口を開いた。
「僕らは、今まで通り杏さんと双子のそばに居ましょう」
「放っておいていいのか?」
「氷雨くんは強いですし、彼のお母さんも相当 強いです。 僕らが居なくても、彼らは大丈夫ですよ」
「そうか、わかった」
「まぁ、彼は視える範囲が狭いので、その点では不安ですが……でも17年生きてきてるのは事実ですので、多分この先もなんとかなります」
「うん。 なんも出来なかった杏ですら17年生きてるんだから、氷雨なら余裕だな」
「えぇ、杏さんですら大丈夫なので、大丈夫ですよ」
……ですら、って。 八峠さんも薄暮さんもヒドいなぁ……。
ていうか私の方を見ながら二人とも笑ってるから、絶対わざとだ。
くそう……何か言い返したいけど、何も言えない。
だって、二人が言うように 私ですら 生きている。
今まで何も出来ずに逃げてばかりだったけれど、それでも生きている。
こんな私が生きていられるんだから、氷雨くんならきっと余裕だ。



