「……薄暮さんも八峠さんも、いつも、こんな……」
「うん、見てるよ。 杏さんが見たものと同じものを、いつも見ている」
「……私、あの人たちを……」
「彼らはカゲロウに操られていた。 そんな彼らを救ったのは杏さんだよ」
私の肩を抱き、慰めてくれている薄暮さん。
……霊を斬る時の薄暮さんの瞳が冷たいのは、シャットダウンした証なのかもしれない。と、その時に思った。
感情を無くし、機械的に相手を倒す。 ……そうしなければ、あまりにもツラい。
だから薄暮さんは、霊を倒す時は感情を無くしているんだ。
八峠さんもそうだ。
なんでもないような顔で霊を倒していたけれど、本当はきっと、色々なものを見ていたはず……。
秋さんの霊と戦った時に、『躊躇わない』と言い続けていたのは……それはきっと、秋さんの想いを見るのが 苦しかったから……。
「彼らは悪霊と呼ばれる存在だったけれど、それでもちゃんと上へ行ったよ。 杏さんが、送ってあげたんだ」
「……はい……」
「教えてなくてごめん。 ごめんね、杏さん」
優しい言葉と共に私の体を抱き締めた薄暮さんを、私も抱き締める。
彼の胸の中で、私はただただ涙を流していた。



