「さっきお前の両親に連絡しといた」
「……え?」
「『幽霊関係のことで一晩預かる』と話して、既に了承済みだ」
「え、ちょっ……ど、どういうことですかっ!?」
「明日は休日なんだから、泊まるのだって問題無かろう?」
「いやっ、あの……!! どうして急に泊まるとかそういう話になってるんですかっ!? 全然、意味がわからないんですけどっ……!!」
確かに明日は休日だから、夜遅くまで起きていても大丈夫だし、朝寝坊だって出来る。
でも、だからって八峠さんの家に泊まるなんて、話が急すぎるっ!!
「……あのな、双葉 杏。 お前のところと双子のところを行き来してる俺の睡眠時間がどのくらいか知ってるか?
前は双子の面倒だけでよかったのに、今はお前の面倒まで見なくちゃいけないんだぞ?」
「うっ……」
「お前の事情なんか知るかよ。 俺は俺が休むために行動するんだ。
結界の中ならどこで何をしててもいい。 だからお前はここに居ろ。 俺のためにここに居ろ」
そんなの勝手すぎるよっ!! ……と思ったけれど、それを口に出して言うことは出来なかった。
……今、私の家には結界が無い。
常にお札は持っているけれど、その効力がいつ切れるかは誰にもわからない。
つまり、いつ襲われるのかも わからないということだ。
ううん、この前みたいに強い黒い塊が来たら、お札なんてまったく意味が無いのかも……。
そんな状態の私を守ってくれてるのは、八峠さんと薄暮さんだ。
私のそばにはオサキが居てくれるけど、それでもきっと八峠さんたちは絶えず幽霊の警戒をしていて、気を張り続けているんだ。
私が眠っている間も、ずっとずっと……。



