君の知らない物語


出てくるのは何の意味ももたない涙だけ。
静かに、ただ静かに流れるそれは
私の体温を下げると同時に
風をさらに冷たくするのだった。

夏なのに、暑いのに。
ただただ寒くて。
風が冷たくて。
凍りそうで。
それでも暖かい。
暖かい何かが私を包み込む。

何だろう。この感覚。
よくわからない。
そうだよね。
わからなくて当然なんだよね。
だって今私は
香流と話しているのだから。

何でだろう。
せっかく香流と話せるのに。
あれだけ望んだことなのに。
悲しみが溢れてきて。
たくさんたくさん溢れてきて。
何も言えない。