「好きだった。ずっと好きだった。」

夕日が沈んでゆく海を見つめながら
彩葉は独り呟いた。
波の音だけが時が進んでいるのを告げる。
長く伸びる彩葉の影は悲しく、冷たい。

「好きだった。でも、言わなかった。
言えなかった。」

一筋の涙が彩葉の頬を流れ落ちる。

「忘れたくないよ。
ここから2人で見た星も。
2人で喋って帰ったことも。
ずっと...ずっと...。」

辺りが暗くなり始める。
空にはうっすらと星が輝き始めていた。
まだ夏だというのに、
ひんやりする風が、彩葉の髪を揺らす。

こぼれ落ちる涙が、暗い海の底に沈んでゆく。
そのまま彩葉の心も沈んでゆくかのように。


「もう一度、会いたい――。」