ペチャクチャ話ばかりで表の修正が捗らない。

仕方なく修正液で間違った金額を消す刹那。

結局会計は、琥珀ではなく刹那の仕事になりそうだ。

そんな彼の横顔を見ながら。

「家族じゃないならぁ…」

琥珀はススッと身を摺り寄せる。

「僕と刹那君は、なぁに?」

「っ…」

甘い香りがする。

シャンプーの香りか、石鹸の香りか。

まさか琴月の跡取りのお嬢ともあろうお方が、娼婦のように香水などつけているのか?

その香りに微かな目眩を覚えながら。

「兄妹でもないとすると…」

琥珀はクスッと笑う。

「恋人同士?」