「…………」

そこに、一人の男が立っていた。

背中まで届く長い白髪、鋭い眼光、鍛え上げられた鋼のような肉体を片肌脱ぎの袈裟のような着物で包んでいる。

どことなく龍太郎を彷彿とさせるような、大柄な男だった。

龍之介の父、さくらの祖父とは思えぬような、若々しい姿。

無論、これは人間態に過ぎない。

本性はかつて龍之介が見せたような、彼以上に巨大な東洋の龍の姿。

白銀の鱗を纏い、一対の角を持ち、天を翔け、炎を吐き、街一つをも容易く滅亡させるような大妖。

しかしそんな大妖が。