深夜の天神埠頭。

誰もいない倉庫街を、走り抜ける影があった。

相当な速度で走っていながら、その影は全く息を乱す事はない。

動きを妨げる事のない、諜報活動用のスニーキングスーツ(潜入装備)。

そして左右の大腿部のホルスターに収められた二挺の拳銃。

どんな軍人も警察官も、この拳銃の名前は知らない。

何故ならこの拳銃もその使い手も、元々はこの世界のものではないから。

早川 リィファ。

ハニーブラウンの髪を持つ、凄腕のロシア大統領直属エージェントだった。