父譲りの茶の緩やか且つ長い髪を邪魔にならぬよう纏める。

母譲りのしなやか且つボリュームのある肢体は、道着に包んでも隠し通せる筈もなく。

「琥珀殿!勝負勝負!」

「琥珀先輩、こんにちはぁ」

その琥珀の前に、チンチクリンな二人が立った。

片方は銘刀・菩薩を携えた少年剣士、もう片方はでかいウサギのぬいぐるみ『綾小路(あやのこうじ)』を抱えた少女。

少年の方は高等部2年の夕城 武(ゆうしろ たける)、少女の方は中等部1年の夕城 花(ゆうしろ はな)。

かつての夕城家指南役、夕城 善(ゆうしろ ぜん)と橘 花音(たちばな かのん、現・夕城 花音)の子供達だ。

彼らもまた、この夕城道場の門下生。

まぁ妹の花の方は、お兄ちゃん大好き一人大嫌いな母親譲りの性格の為、稽古もせずに同行しているだけだが。

武はまだ若輩ではあるが、ゆくゆくは次の夕城の世継ぎ達の師匠となる身。

中2にして、そこいらを既に自覚している節がある。

対峙する琥珀と武の間に立って。

「では稽古、はじめアル!」

鬼龍がパンッ!と手を叩いた。