「!?」

龍乃の口から出た『人外』という言葉。

亜鳥は思わず反応して振り向く。

…龍乃は薄く笑っていた。

いつもの屈託ない笑顔とは違う。

顔こそ笑っているが、その笑みにはどこか凄味を感じさせた。

「ようやく自在に出入りできるようになった…宿主の娘とはいえ、他者の血が入ると丹下の肉体も扱いづらいものよな」

「アンタ…誰っ?」

ガタンと椅子から立ち上がり、素早く距離を置く亜鳥。

目前の龍乃の瞳は、いつか見た蛇妖の眼と化していた。

「龍乃じゃないわね…龍乃はどこ行ったの?」

「今は眠ってもらっている」

椅子の背凭れに体を預け、尊大な態度で足を組む龍乃…の姿の誰か。

「じゃあアンタは誰?龍乃に憑りついた人外の類?」

「憑依する小者風情と一緒くたにするな。我はそのような雑魚とは違う」

そいつはニヤリと笑った。

「数百年前から…この娘が生まれる前から、丹下の血に封じられていたわ」