私は普通の女子高生です。

普通に友達に恵まれ、頭はよくも悪くもなく、多少運動はできるけれど、全国的に見れば普通だと思います。

そんな私が通う学校にも、マンガのようにモテる人たちがいます。




「好きです」




黒髪の爽やかなイケメンさんがその形の整った口から言葉を発した。

「えっ……」

必死の思いで絞り出した言葉がこれでした。

「あっ、ごめん。
急にこんなこと言われても困るよな……。
昔さ、霧島さんに助けてもらったんだ。
俺はそれに救われて……一目惚れたってやつなんだけど、俺と男女の関係で付き合って欲しい!」

―助けた……?

私にはイケメンさんの言っている意味がよくわかりませんでした。

「……あの、人違いではないでしょうか……?」

「はははっ!
確かに霧島さんだったよ。
……で、どうかな……?」

自分の気持ちに正直になると、嬉しいです。

人に好意を寄せられるということは嬉しいものです。

―でも……。

「私には愛というものがないと言われました。
……だから……あなたの、その、似合わないと言いますか…」

「そんなの関係ないよ」

何も問題ないというように、あっけらかんと私の言葉を遮りました。

「……で、返事はどうかな?」

はっきり言うと、断ろうと思っていました。

でも真剣な眼差しで、顔を赤らめながら声を震わせている様子を見ているとつい、コクりと首をうなずいていました。

「本当!?
嬉しいなー!」

「あの……名前を」

「そうだよね!
えー、一戸瀬 恵介(ひとせ けいすけ)って言います!
よろしく!」

「一戸瀬くん……。
私の名前は……」

「知ってるよ!
霧島 命(きりしま みこと)さんだろ?
それに俺のことは恵介でいいよ。
俺も命って呼ぶから!」

「うっうん……。
よろしくね……、恵介くん」

「あぁ!!よろしく!」


『キーンコーンカーンコーン』


今は昼休みだったことをおもいだしました。
お昼はまだだったけど食べるきにはなれません。
こんなときは浮かれて友達に自慢すべきなのでしょうが。

だって学校一のイケメンと言われている人に告白されたのですから。

―なんだろう……。
この胸騒ぎ……。

「じゃあ……次の授業があるので……」

「うん!
またあとで!」

―でも、いい人そうだし……。
気のせいだよね……。

授業が始まる五分前を告げるチャイムがなったので、いそいで教室へと戻りした。





私の去った後の教室で、恵介くんが何か呟いたとも知らずに。



命の去った後の教室で、恵介は後ろに隠し持っていた包丁を取り出し一人、ほくそえんでいた。

「よかった……。これの出番がなくて。
好きなこは傷つけたくないし……。
命…命命命命命命命命命命命命命命命命。みこと……!
愛してる」

恵介は包丁を一舐めし、虚空を見つめたまま恍惚の表情にさいなまれた。