昨晩もこの先二度と味わえないのではないかと思うほど立派なお風呂に入った。
余り良い状況下ではないことは理解しつつも、二日連続で高級と名の付くにふさわしい場所で、熱いお風呂を一人で堪能できることに、沙耶は恐怖すら感じていた。
広すぎる浴室にそわそわしながら、早々にシャワーを浴びて、ソファに並べられていた10種類の紙袋の内の一つに着替える。
どの紙袋にも有名ブランドのロゴが入っていて、そのほとんどは沙耶が知らないものばかりだったが、恐ろしい程にサイズはぴったりだった。
沙耶が選んだのは、一番地味そうで、比較的安そうだと感じたもの。
コットンツイードのリトルブラックジャケットと、ビスチェドレス。
「それでもやっぱり、、派手…」
鏡に映る自分の姿に、心の声が口をついて出た。
―どうして一般的な、Tシャツにデニム、とか、ないんだろう。
金持ちには金持ちなりの一般的な服装があって、それがこれなのだろうか。
どこのパーティーに行くわけでもないのに。
どう考えても自分には不釣合いな、その服に沙耶は深い溜め息を吐かずにはいられなかった。


