シンデレラは硝子の靴を

羽織らされたジャケットの温もり。


沙耶を抱く坂月から伝わる体温。



それだけでも、冷えた身体には心地良く感じられた。



ゆっくりと壊れ物を扱うようにして、慎重に、そして控えめに回されている腕から、坂月の緊張が滲んでいるのだが、沙耶は気付かない。



むしろ、静かに踏みしめられる一歩一歩のテンポも、睡眠を誘う。



月明かりの下、坂月が石垣邸の門まで辿り着いた時には、もう沙耶の意識はなく。




驚いて近づく門番に、坂月は人差し指を口にあてて合図する。



そして、門のすぐ脇に停めてあった自分の車―いつかのロールスロイスではなく、白のベンツ―の助手席にそっと沙耶を下ろすが、彼女は未だにネクタイをぎゅっと掴んで放さない。




坂月は弱ったなぁ、とそのままの姿勢で思案する。



自分の車は二人しか乗れない上に、シートが倒れない。



横たわらせてあげることもできず、ネクタイも放してもらえないのでは、どうしようもない。