「なんで、こんな所に―」
坂月はしゃがみこむと、沙耶の様子を見てぎょっとする。
坂月の質問に、それはこっちの台詞だと言ってやろうかと沙耶は思ったが、寒さのせいで声が上手く出なかった。
そこで初めて、沙耶は自分が震えていることに気付く。
「なんて格好してるんですか?!風邪ひいてしまいますよ!」
坂月は慌てて自分の着ていたジャケットを脱ぐと、座り込んでいる沙耶の肩に掛けた。そのまま、立たせようとしたが、沙耶の足に力が入らない。
「仕方ない、ちょっと我慢しててください。」
坂月はそう言うと、沙耶を抱き上げた。
「とにかく、中に入って身体を温めないと―」
くるりと身体を反転させた所で、坂月はネクタイに違和感を感じ、抱えた沙耶に目をやる。
見ると、沙耶がネクタイを引っ張って、首を小さく振っていた。
「…や、、です…」
沙耶の顔をまじまじと見つめた坂月の表情はすぐに歪んだ。
「泣いたんですか?」
沙耶はそれには何も答えずに、ただ坂月に向けていた目を伏せる。
「…わかりました。ここから離れます。ただ、この格好で家に返すわけにはいきません。弟さんが驚かれるでしょう。別の場所で、身体を温めて着替える、それから話を聞きます。」
いいですね?と坂月が確認を取るので、沙耶はコクリと頷いた。
とにかく、この敷地から一刻も早く、出たかった。


