シンデレラは硝子の靴を


ひとしきり泣いた後、沙耶は周囲を見回した。



オールドローズが咲き誇る、広大な庭園。



仄かな明かりは要所要所に配置されているが、何しろ広すぎて全体像がわからない。


まず、外壁さえも見当たらない。





そして。





「寒い…」





沙耶は今の自分が置かれている状況をやっと把握し始める。



涙が流れた跡も冷たい。




「ワンピース、破れてても羽織れるかな…?」




身体を覆うものも必要だというのに。




最悪、朝までこのままか。



石垣に見つからないように、身を潜めていなければならないのか。



途方に暮れ始めたその時。




背後から、ガサ、と草を踏みしめる音がした。



「!」



予期していなかった事に驚いて、身を硬くするので精一杯だった。




「…秋元さん?」



やがて静かに降ってきた声に、沙耶は弾かれたように振り返る。




「さ、坂月…さん?」




見ると、オレンジの灯りに照らされたスーツ姿の坂月さんが、驚いた顔をしてこちらを見下ろしていた。