石垣の瞳は揺らいでいるが、何を考えているのかは、わからない。
しかし、沙耶の目は相手を見上げ、きつく睨んでいた。
そして、ほんのりと、濡れていた。
「…なぁ「…らい…」」
「え?」
口を開きかけた所で、沙耶が何かを呟いたので、石垣は口を噤む。
「あんたなんか、大っ嫌い」
沙耶はありったけの憎しみを籠めてそう言い捨てると、自分を掴むその手を振り解き、石垣に背を向けて再びドアノブに手を掛けた。
大きな扉だが、すんなりと開いたことに安堵した。
沙耶は後ろを振り返る事無く、屋敷を出て行く。
「だんな様、どうかなさいましたか?」
ガチャンと金具の音が響き、それを聞きつけたメイドが駆けつけてきても。
石垣は黙ったまま、その場に立ち尽くし―
ただ、自分の掌を、見つめていた。


