「へぇ。じゃ、自己流か。」
少し驚いたような口調で石垣が呟いた。
沙耶としては、乱闘シーンを目撃されて、かなり恥ずかしかった。
さぞかし何か嫌味ったらしいことを言われるのだろうと構えていたが、予想に反して石垣はそのまま黙り込んでしまった。
彼が次に口を開いた時は、沙耶が食事を済ませた時だった。
「…そろそろ、話すか。」
暖かいミルクティーが目の前に置かれ、気持ちがほっこりする場面で。
ふいに落とされた石垣の声に、沙耶の身体に緊張が走った。
「就任パーティーの時の失態の代償はかなり高くつく。石垣グループとしては、お前をこのまま放って置くのは面子に関わる。」
手を顔の前で組んで、まるで裁判官のように言う石垣に、沙耶は軽く憤りを覚える。
―元はと言えば、あんたが悪いんでしょ。
それでも、心の中で悪態を吐くだけに留めた。
「まぁ、分かっているだろうが、お前ごときの人間一人、捻り潰す位訳ない。」
石垣が何を言いたいのがさっぱり見当がつかず、だから何が言いたいんだと頭の中で何度も叫ぶ。


