同時にあんなにあった食欲が一気に失せていく。
―こいつと二人きりで食事なんて、冗談じゃないわ。
「すっごく悔しいけど、あんたの望みどおり来てやったわよ。用件を早く言ってくれる?」
沙耶はその場で腕組みしながら、石垣を睨み据えた。
目の端では、さっきの執事が椅子を引いて待っててくれているのが見えている。
グラスもきちんと二つ並べられている。
ほんの少し前までは、食べるつもりだった。
『ご主人様』が一体誰なのか、薄々感づいてもいた。
けれど、実際に石垣と対面した今、奴と同じ空気を吸うことが、沙耶にはやはり我慢ならなかった。
「どーせ、腹減ってんだろ?とにかく座れよ。」
「あんたと同じもの食べる位なら餓死した方がマシよ。」
吐き捨てるように言えば、石垣の眉間に皺が寄る。
「…へえ?随分と言うじゃねぇか。お前今自分がどんな状況にあるか分かってんの?」
テーブルの上に足を投げ出し、肘掛に頬杖を付く石垣の様子に、沙耶は苛々が増していくように感じた。
「これ以上俺に逆らったら、お前の母親も、友達も、どうなっても知らねーぞ。」
「だから!用件を言えっつってんのよ!」
一歩も退かない沙耶の態度に、石垣ははぁ、と溜め息を吐いて、額に手を当てる。
「だから―、とにかく、、、飯食えって。」
「だからっあんたと同じものは―」
だから、が三回続いた所で、石垣が沙耶を遮った。
「俺は、食わないって。」


