シンデレラは硝子の靴を

大きな階段を下りて直ぐ脇に続いている廊下をずっと進んでいくと、存在感たっぷりの扉の前で、眼鏡を掛けた老紳士が一人、立っていた。




「さ、こちらでございます。」




メイドはその前で恭しく沙耶にお辞儀をし、老紳士が扉を開いた。




―あれは、執事かな。



開かれた扉の向こうから漂う美味しそうな匂いに誘われながら、沙耶はメイドと執事を一度に見ることができたという変な達成感を感じていた。




が。




「おっせーな。」




一歩中に足を踏み入れた途端、現実は直ぐにやってくる。




さっき居た部屋同様、少し落とされている照明。



映画でしか見たことのない、金持ち特有の長いテーブルには等間隔でキャンドルに火が灯されていて。



その上には見たことのない料理たちが、湯気を上げて並んでいる。



壁には金の額縁に入った高そうな風景画が掛かっていて。





そして。




奥に座する、紛れもない、石垣諒。




「お前も、それくらいするとちょっとは見栄えするもんなんだな。」




偉そうに、ふんぞり返る、にっくき敵を前にして。




「やっぱり…あんた、、、よね。」




沙耶は、がっくりと項垂れる。



「なんだよ、それ。」







石垣は怪訝な顔をして、立ったままの沙耶を見上げる。



沙耶は入り口に居て、石垣は一番奥にいる為、長いテーブルの端と端になっている二人の距離は、少し遠い。




―気を失う前の記憶はどうか夢であってくれと願ってたのに。




沙耶は舌打ちした。




やっぱりここはこいつの家だったのか、と。