シンデレラは硝子の靴を

「あの、、これから、どちらに?」



シンデレラかよと思う程の大きな階段に出た所で、沙耶は思い切ってメイドに訊ねる。



「お夜食をご用意致しておりますので、食堂へ向かっております。」



かわいい顔をしたメイドは、振り返って小さく微笑んで見せた。



―食堂…夜食…



そう聞いて沙耶のお腹がくぅと鳴った。



よく考えて見れば、お昼から何も食べていない。


すきっ腹に、酒だけしか、飲んでいない。




脱出の決意を揺らがせる誘惑。



沙耶は悩むが、足が勝手に動いてしまう。


見てみると、階段を下り切った辺りに、玄関らしきものがあった。



―あそこを突っ切れば、外に出れる。


沙耶はうーん、と考え込むが。



―いいや、腹ごなししてからでも。



腹が減っては戦はできぬ、とはよく言ったものだ。


自分自身に言い訳しながら、沙耶は階段を下り始める。



―それに。



「あの…さっき私が着てた服なんですけど…返していただけますよね?」



父親からもらった紺のワンピースの所在が、気になっていた。


メイドはああ、と頷く。



「クリーニングするところでございます。」




「!いや、いいので、直ぐ返してもらえますか?」






そんなことしてたら、明日の朝まで脱出できなくなってしまう。


「良いのですか?…わかりました、それではご案内した後で、食堂にお届けしますね。」



最後の一段を下りた所で、必死の形相で頼み込む沙耶に、メイドは親切に提案した。