シンデレラは硝子の靴を

「あー、酒臭…」



自分と、自分の服に纏わりついた酒と煙草の匂いに沙耶は顔を顰める。



「一張羅だったのに…」



沙耶にとって女の子らしい服は、この紺のワンピース、だけしかない。


大学の入学式の時に着るといいと、父が買ってくれたもので。


スーツの方がいいよ、と沙耶は憎まれ口を叩いた。



結局それが、父が沙耶に買ってくれた最後のものとなり、追い出された際も、これだけは、となんとか守り通した。



今回のバイトでは、スカートを着てくるように指示されていたから。


仕方なく沙耶はこのワンピースに袖を通したのだったが。



まさか、あんな店だとは知らなかった。



諦めの溜め息を吐いて、沙耶はとりあえずベットから降りる。




そこに。


コンコン、とノックの音が響いた。




「秋元様、お目覚めでしょうか?」




見知らぬ女の声に、沙耶は首を傾げる。



「―失礼致します。」



返事をしない沙耶を余所に、ばかでかい金のドアノブがカチャと控えめに回される。




「あぁ、起きてらっしゃったのですね。」




そぉっとドアの隙間から顔を覗かせた女は安心したように中に入ってきた。





―メイド?



沙耶は目を瞬かせながら、グレーの制服に白いエプロンを身に着けた女を見つめて思う。




「ご主人様がお待ちですので、お召し替え願います。つきましてはこちらへ。」



「-へっ?」




メイドは素っ頓狂な声を出す沙耶を、かわいい顔に似合わない力でぐいっと引っ張った。